はじめに:提案書1本に6時間かけて、受注できなかった

先月、ある中小企業のWeb集客支援の案件で提案書を作った。ヒアリング内容を整理して、課題を分析して、施策を3パターン設計して、見積もりを添えて。完成までに6時間かかった。

結果、不採用だった。理由は「他社の方が提案内容がわかりやすかった」。

6時間の労力が消えた。でも振り返ると、自分の提案書には問題があった。情報は詰め込んでいるのに、「この人に頼めば何が変わるか」がストレートに伝わっていなかった。構成もいつも同じワンパターン。課題整理→施策提案→見積もり。間違ってはいないが、読む側の心を動かす構成にはなっていなかった。

2か月前からClaudeで提案書の骨子を作り始めた。制作時間は6時間から2時間に減った。そして、受注率が上がった。


一人社長の提案書作成、何が問題なのか

問題1:時間がかかりすぎる

提案書の制作工程を分解すると、以下の時間配分になる。

工程 所要時間 内容
ヒアリング内容の整理 30分 メモの整理、課題の抽出
構成の設計 60分 どの順番で何を伝えるか
本文の執筆 120〜180分 文章を書く
デザイン・レイアウト 60〜90分 見栄えの調整
推敲・修正 30〜60分 内容の確認、誤字脱字チェック
合計 5〜7時間

この中で最も時間がかかっているのは「構成の設計」と「本文の執筆」だ。合わせて3〜4時間。ここがAIの出番になる。

問題2:構成がワンパターン

何本も提案書を書いていると、構成が固定化される。「課題→施策→スケジュール→見積もり」の順番が定番になり、どの案件でも同じ流れになる。

問題は、この構成が「自分にとって書きやすい順番」であって、「相手にとって読みやすい順番」とは限らないことだ。相手が知りたいのは「結局、何がどう変わるのか」であり、課題分析から順に読みたいわけではない。

問題3:競合との差別化ができていない

一人社長の場合、提案書のクオリティがそのまま信頼の判断材料になる。大企業のようにブランドネームで補完できない。それなのに、テンプレートに当てはめただけの無個性な提案書を出していると、他社と横並びになる。


Claudeで提案書の骨子を作るプロンプト

基本プロンプト

以下は、ヒアリング後に提案書の骨子を一気に作るためのプロンプトだ。

あなたはビジネスコンサルタントです。
以下のヒアリング内容に基づいて、提案書の骨子を作成してください。

【クライアント情報】
- 業種:[業種]
- 企業規模:[従業員数・売上規模]
- 相談の背景:[なぜ相談に至ったか]

【ヒアリングで把握した課題】
1. [課題1]
2. [課題2]
3. [課題3]

【提案する施策】
- [施策の方向性を簡潔に]

【提案書の構成】
以下の順番で構成してください。
1. 表紙(タイトルとサブタイトル)
2. エグゼクティブサマリー(提案の要点を3行で)
3. 現状の課題(ヒアリング内容に基づく)
4. 提案する施策(具体的なアクション)
5. 期待される成果(定量的な目標を含む)
6. 実施スケジュール(月単位)
7. 費用
8. 次のステップ(契約後のアクション)

【注意点】
- 専門用語は使わず、経営者が読んでわかる言葉で書く
- 「私たち」ではなく「私」を主語にする(一人社長なので)
- 数字や根拠を可能な限り含める
- 各セクションは200〜400文字程度

業種別に構成を変えるプロンプト

提案先の業種に応じて、構成そのものを変えるのも効果的だ。

以下のクライアントに対する提案書の「最適な構成順」を提案してください。

【クライアント情報】
- 業種:製造業(BtoB)
- 決裁者:代表取締役(60代男性)
- 重視するポイント:実績と費用対効果

一般的な提案書の構成ではなく、
このクライアントが「最も納得しやすい順番」で構成してください。
なぜその順番が有効かの理由も添えてください。

このプロンプトで出力される構成は、たとえば「実績紹介→課題の確認→施策→費用対効果→スケジュール→費用」のようになる。決裁者が「実績と費用対効果」を重視しているなら、冒頭に実績を持ってくる方が関心を引ける。


業種別テンプレート

コンサルタント向け

コンサルティングの提案書は「課題の解像度の高さ」が信頼につながる。相手が「この人はうちのことをわかっている」と感じれば、受注率は大きく上がる。

以下の情報で、コンサルティングサービスの提案書を作成してください。

【構成】
1. 表紙
2. ご相談内容の要約(ヒアリング内容を自分の言葉で整理)
3. 現状分析(数字を含む)
4. 本質的な課題(表面的な課題の奥にある根本原因)
5. 解決のアプローチ(3ステップ以内)
6. 各ステップの具体的なアクション
7. 期待される成果(Before/After)
8. 類似案件の実績(匿名可)
9. 費用と進め方
10. 次のステップ

【トーン】
- 分析的だが、堅すぎない
- 「〜と考えます」「〜が有効です」の語尾
- 専門用語には必ず補足を入れる

制作業(Web制作・デザイン)向け

制作案件の提案書は「何をどう作るか」の具体性がカギだ。ワイヤーフレームやデザインの方向性を含めると、相手がイメージしやすくなる。

Web制作の提案書を作成してください。

【構成】
1. 表紙
2. プロジェクトの概要(何を作り、何を実現するか)
3. 現在のサイトの課題(具体的な問題点を3つ)
4. 制作方針(デザインの方向性、ターゲットユーザー)
5. サイト構成案(ページ一覧と各ページの目的)
6. 技術仕様(使用するCMS・フレームワーク)
7. 制作スケジュール(工程別の期間)
8. 費用内訳(工程別の見積もり)
9. 保守・運用プラン
10. 次のステップ

【注意点】
- 技術的な詳細は最小限に。経営者が判断に必要な情報のみ
- 「なぜこの技術を選ぶのか」の理由は、ビジネス上のメリットで説明する

士業向け

士業の提案書は「正確さ」と「安心感」が最優先。法令に基づく根拠を明示することで、専門家としての信頼を示す。

[士業の種類]の業務提案書を作成してください。

【構成】
1. 表紙
2. ご相談内容の確認
3. 関連する法令・制度の概要(平易な言葉で)
4. 対応方針と手続きの流れ
5. 各手続きの所要期間
6. 想定されるリスクと対策
7. 報酬体系(顧問料 or スポット料金)
8. ご依頼いただく際の必要書類
9. 次のステップ

【トーン】
- 信頼感を重視。正確だが、法律文書のように堅すぎない
- 専門用語は必ず括弧書きで補足する

「自分の言葉」にする編集工程

AIが生成した骨子は、そのまま提出しない。「自分の言葉に変換する」工程が、提案書の質を左右する。

ステップ1:固有の情報を追加する(15分)

AIはヒアリング情報に基づいて骨子を作るが、「クライアントの社長が会議中に何気なく言った一言」や「オフィスを訪問したときに感じた雰囲気」は含まれていない。こうした一次情報を手動で追加する。

たとえば、ヒアリングで社長が「正直、Webのことは全然わからなくて」と言っていたなら、提案書の冒頭に「初回のお打ち合わせで、Web施策に不慣れであることを率直にお伝えいただきました。本提案は、専門知識がなくても判断いただける内容を心がけています」と一文を加える。

この一文があるだけで、「テンプレートの提案書」から「自分のために書かれた提案書」に変わる。

ステップ2:語尾とトーンを調整する(10分)

AIの文体と自分の文体には微妙な違いがある。「〜であると考えます」「〜を推奨いたします」のような文体が自分に合わないなら、「〜がよいと考えています」「〜をおすすめします」に変える。

提案書全体のトーンが統一されていないと、「一部を誰かに書かせた」という印象を与える。最後に通して読み直し、トーンのムラがないか確認する。

ステップ3:不要な部分を削る(10分)

AIは情報を網羅的に出す傾向がある。すべてを残す必要はない。クライアントの判断に必要ない情報は削る。

目安として、提案書の総ページ数は5〜10ページ。それ以上になると読まれない。一人社長の提案書は「短くて濃い」が正解だ。

メール文の下書きでも同じアプローチを使っている。詳しくは「メールの下書きをAIに任せる方法」を参考にしてほしい。


デザイン仕上げ

Canvaで提案書をデザインする

骨子と本文ができたら、最後にデザインを整える。Canvaには「プレゼンテーション」テンプレートが豊富にあり、提案書のベースとして使える。

Canvaでの仕上げ手順:

  1. Canvaで「プレゼンテーション」を選択
  2. ビジネス向けテンプレートを選ぶ(シンプルなもの)
  3. ブランドカラー(自社のコーポレートカラー)を設定
  4. テキストを流し込む
  5. 図表やアイコンを追加(Canva内蔵の素材を使用)
  6. PDF形式でエクスポート

デザインに凝りすぎる必要はない。重要なのは「読みやすさ」と「統一感」であり、装飾ではない。

Notionで提案書を共有する

最近は、PDFではなくNotionのページとして提案書を共有するケースも増えている。メリットは3つ。

  1. リアルタイム更新 -- 提出後に修正や追加があれば、即座に反映できる
  2. 閲覧状況の把握 -- Notionアナリティクスで、相手がいつ・何ページ見たかがわかる
  3. コメント機能 -- 提案書の特定の箇所にコメントをもらえる

ただし、クライアントが「紙で印刷して検討したい」というタイプの場合は、PDF形式で提出する方が無難だ。相手のITリテラシーに合わせる。

Googleスライドという選択肢

Canvaの操作に慣れていない場合は、Googleスライドでも十分だ。テンプレートの種類はCanvaに劣るが、Google Workspaceを使っている相手とはそのまま共有でき、コメントのやり取りもスムーズにできる。


AIで提案書を作るときの注意点

機密情報の取り扱い

ヒアリング内容をそのままAIに入力する場合、クライアントの社名、売上数字、具体的な課題を含むことになる。以下の対策を取る。

  1. 社名を匿名化する(「A社」「製造業B社」など)
  2. 売上や利益の具体的な数字は丸める(「年商3億円」→「年商3億円規模」)
  3. ChatGPTを使う場合は、設定で学習利用をオフにする
  4. Claudeを使う場合は、Proプラン以上で入力データの学習無効化を確認する

AIの出力を鵜呑みにしない

AIが提案する施策やスケジュールは、一般的なテンプレートに基づいている。クライアントの固有事情(予算の制約、社内の人間関係、過去の失敗体験)は反映されていない。

AIの出力は「叩き台」であり、クライアントを知っている自分が判断を加えて初めて提案書になる。

「AI感」を消す

AIが生成した文章には、特有のパターンがある。「〜することが重要です」「〜を推奨いたします」「包括的なアプローチ」のような表現は、AI臭さが出やすい。

対策は、自分が普段クライアントに口頭で話すときの言葉遣いに置き換えること。「重要です」→「ここがポイントです」、「推奨いたします」→「これがよいと考えています」のように。


受注率が上がった理由を振り返る

AIを導入してから、提案書の受注率が体感で1.5倍ほど上がった。理由を振り返ると、3つある。

理由1:提出スピードが上がった

以前は提案書の完成まで3〜5営業日かかっていた。AIで骨子を作ることで、ヒアリング翌日に提出できるようになった。早く出すこと自体が、相手に「対応が早い=仕事が早い」という印象を与える。

理由2:構成のバリエーションが増えた

AIに「最適な構成順」を考えさせることで、毎回同じ構成の提案書から脱却できた。クライアントの業種や決裁者の関心事に合わせて構成を変えることで、「自分のために作られた提案書」という印象が強まった。

理由3:編集に時間をかけられるようになった

骨子をAIに任せた分、「自分の言葉に変換する」「クライアント固有の情報を追加する」「デザインを整える」といった、人間にしかできない作業に時間を割けるようになった。結果として、提案書の完成度が上がった。

AIのビジネス活用パターン全般については「ChatGPT・Claude、一人社長の活用パターン10選」でも整理している。LPコピーへのAI活用は「LPのキャッチコピー、AIに書かせたらCVRはどう変わるか」を参考にしてほしい。


よくある質問

Q. 提案書のAI活用は、相手にバレますか

構成や語彙のパターンから「AIを使っている」と気づく人はいる。ただし、それ自体は問題ではない。問題になるのは、AI出力をそのまま提出して「自分の考え」が含まれていない場合だ。骨子はAIに任せ、判断・洞察・固有情報の追加は自分で行うことで、「AIを使いこなしている人」という印象になる。

Q. ChatGPTとClaudeのどちらが提案書作成に向いていますか

構成設計はどちらでも大差ない。ただし本文の生成では、Claudeの方が日本語の敬語表現が自然になる傾向がある。特に士業やコンサルタントの提案書では、トーンの安定性が重要なのでClaudeを試してみてほしい。両ツールの詳しい比較は「ChatGPT・Claude活用ガイド」で扱っている。

Q. 提案書の適切なページ数はどのくらいですか

一人社長の提案書は5〜10ページが適切だ。3ページ以下だと情報不足に見え、15ページ以上だと読まれない。特にエグゼクティブサマリー(提案の要点を1ページに凝縮したもの)は必須。忙しい経営者は、エグゼクティブサマリーだけで判断することも多い。

Q. 無料プランのAIでも十分使えますか

骨子の作成は無料プランでも十分に機能する。ただし、長文の提案書を一度に生成する場合は、有料プランの方が出力の文字数制限が緩い。月2〜3本の提案書を作るなら、Claude ProまたはChatGPT Plusの月額費用(各3,000円前後)は十分に元が取れる。


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ここまでの整理

提案書の制作をAIに一部任せることで、制作時間は6時間から2時間に短縮できた。受注率が上がった理由は、提出スピード、構成の柔軟性、編集への時間配分の3つだ。

やるべきことは3つ。

  1. ヒアリング内容をプロンプトに入力し、骨子をAIに生成させる -- 構成の設計と本文の下書きを30分で終わらせる
  2. クライアント固有の情報を手動で追加し、自分の言葉に書き換える -- ここが「テンプレート」と「提案書」の分かれ目になる
  3. Canva or Notionでデザインを整え、ヒアリング翌日に提出する -- スピード自体が信頼につながる

次の提案書を作るとき、まずはClaudeに骨子を作らせるところから試してみてほしい。構成の設計で悩む時間がゼロになるだけでも、体感は大きく変わるはずだ。